2020.06.03

結論は先に、表現はストレートに「持ち帰って検討します」は禁句

内田和成さま
(早稲田大学ビジネススクール教授、元ボストン コンサルティング グループ日本代表)

日本航空を経て、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表。ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心にマーケティング戦略、新規事業戦略、中長期戦略、グローバル戦略の策定・実行支援を数多く経験。2006年には「世界でもっとも有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年から現職。著書に、『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(東洋経済新報社)

内田和成さま<br>(早稲田大学ビジネススクール教授、元ボストン コンサルティング グループ日本代表)

外資系企業に理解されない日本流の気遣い
BCG(ボストンコンサルティンググループ)時代に、外国の顧客や国内の外資系企業とのコミュニケーションにおいて心がけていたのは、自分の意見をストレートに伝えることです。日本人は「イエス」「ノー」をはっきり口にすると、相手が気を悪くすると考えがちですが、阿吽の呼吸や相手をおもんぱかるという日本流の気遣いは、外国の人には通用しません。

また、相手の意見を否定するのに、「そういう意見もあろうかと思いますが、こういう考えもできるかと……」など日本語の持って回った言い方をそのまま英語にして、「I agree with you but…」と言ったのでは、「どっちなんだ?!」と相手を混乱させるだけです。もう1つ、日本では一般的だけれども、外国の人が嫌がるひと言が、「持ち帰って検討します」。これを聞いた相手は、礼儀上口にこそしませんが、心の中では「もっと権限のある人と交渉させてほしい」と思っています。

結論から入る欧米流が日本でもスタンダードに
コンサルティング業務にはプレゼンテーションがつきものですが、その進め方は相手によって異なります。日本企業が相手の場合は、いきなり結論というのは御法度で、「A だからB、BだからC、したがって結論はDです」と手順を踏むのが一般的です。結論に至るまでにどの程度の緩衝材を挟んでいくかは、相手に応じて判断します。
 
外資系企業が相手の場合は、単刀直入に「まず結論はDです」と始めます。
とくに30 分と時間が限定されている場合には、前置きから入って「A」や「B」の時点で質問が出てしまうと、結論にたどりつけず、「次回に持ち越し」となりかねません。もっとも最近は、日本でも、結論から入る欧米スタイルが浸透しつつあり、グローバルに事業を展開している日系企業であれば、結論から入るようになっています。
 
イエス/ノーの回答にせよ、決定権にせよ、日本の組織に属している以上、担当者が勝手に判断や決断をするには難しい部分もあるでしょう。しかし、「うちの本社の意見では……」などと第三者を持ち出して責任をあいまいにすると、「この人と話をしてもムダ」と思われる最悪の事態を招きかねません。
まずは自分のスタンスを明確にして、それを誤解されない言い方で伝える。
それがグローバル化時代のビジネスのポイントであり、今後は国内でもそうしたスタイルがスタンダードになっていくと思います。

出典:『伝わる短い英語』著:浅井満知子 東洋経済新報社