ISOの動向ISO update
プレインランゲージISO規格
現在の状況と今後のスケジュール、およびこれまでの経緯
プレインランゲージの標準化が進展した
2024.7.23
7月22日、プレインランゲージの国際標準化を進めるISOのオンライン会合が開催された。Angelika Vaasa議長のリーダシップの下で、委員会には各国28名が参加し、主にサイエンスコミュニケーションに関わる標準案(ISO/WD 24495-3 Plain language — Part 3: Science writing)について議論した。
第一のポイントは、この標準の「読者」をどのように設定するか。
科学技術は社会経済に著しい影響を与えている。広く市民が科学技術への理解を増進するためには、市民向けの記事・文書を市民が理解できるように記述する必要がある。このような記事や文書の執筆を仕事にする、いわゆるサイエンスコミュニケータ向けのガイドラインを作成するのがよいという意見が多かった。
日本から参加した山田肇氏は、昨年のG7科学技術担当大臣会合で、サイエンスコミュニケーションの重要性について特に言及されたと紹介した。そして、政府から市民に向けた記事や文書こそ、市民の理解に役立つ必要があると強調した。会議は、政府の政策立案者も含めて、サイエンスコミュニケータ向けの標準にすべきという意見で一致した。
標準案を煮詰めていく過程では、関係者として政府の政策立案者の意見も聞くのが適切であるとの見解を議長が表明した。各国で今後ヒアリングを進めることになった。
第二は、プレインランゲージ原則にどう準拠するか。
すでにISOは原則を標準として発行している。ISO 24495-1:2023 “Plain language Part 1: Governing principles and guidelines”がそれである。Part 3を開発する過程で、既発行のPart 1に改善点が見いだされてきた。これについては、改善点を収集整理したうえで、数年後にPart 1の改正に着手するという方向になった。
最後に、参加したエキスパートの投票により、現在案を作業原案WDから委員会原案CDにステップアップすることが決議された。投票結果は賛成27票、棄権3票であった。
Part 3のCD案は各国に回覧され、3か月の間に各国からコメントが提出されることになる。その後、コメントを解決するための委員会が開かれる。
次回の委員会は9月に予定された。プレインランゲージ原則に沿ったビジネス文書の作成ガイドラインを規定するISO/NP 24896 Standard notation for business reportsに関する議論が実施される。また、来年の2025年6月には日本・高松で顔を合わせての委員会が開催されることが紹介された。
プレインランゲージISO規格の進捗について
2022.08.01
2022年9月21日に開催されるJPELC国際会議2022において、発案議長であるクリストファー・バルムフォード氏がプレインランゲージISO規格の進捗について報告を行います。また、ISO-TC37日本国内委員長である井佐原均氏との対談を行います。
※この内容はInternational Plain Language Federation、Clarity、PLAIN、Centerの各ウェブサイトでも発表されます。
クリストファー・バルムフォード、ISO TC 37 プレインランゲージ・プロジェクトWG 11議長
現在の状況
2020.10.05
ISO(国際標準化機構)は、インターナショナル・プレインランゲージ規格を開発するプロジェクトを進めています。この規格は、なるべく多くの言語で採用できるようにすることを目指しています。
2019年に、ISOインターナショナル・プレインランゲージ規格の開発を担当する作業グループが立ち上がりました。このグループは、言語及び専門用語を取り扱うISO専門委員会37(TC 37)の一部として立ち上げられました。TC 37の作業グループ11(WG11)のウェブサイト右下に、私たちの連絡先が掲載されています。
WG11の議長は私が務めています。メンバーは、16か国の標準化団体を代表する50人です(前回集計時)。16か国の内訳は、オーストラリア、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、日本、ルクセンブルク、メキシコ、ノルウェー、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、英国、米国です。
これ以外の国の標準化団体も、代表者がWG11に参加できます(ISOメンバーの場合)。詳しくはこちらのサイトを参照してください。
International Plain Language Federationを立ち上げた3団体それぞれの代表者もWG11のメンバーとなっています。
ISOでは、リエゾン機関 として正式に指名された機関のみが、作業グループに代表者を送り込むことができます。そのため、リエゾン機関になることには大きな意味があります。
専門委員会は、作業グループとリエゾン機関で構成されています。それぞれが規定されたフローに従い、ISO規格の方針や手順などを確立させます。また、規格の専門家が作業グループをサポートしています。
2020年6月のZOOMミーティングにおいて、WG11は、プレインイングリッシュ規格の原案作成を行うドラフト委員会を設立しました。ドラフト委員会のメンバーには、長期にわたりTC37に参加している規格開発の専門家の2人(エストニア人とドイツ人)と、ハンガリー、日本、メキシコ、ノルウェー、アメリカのプレインランゲージ専門家7人が指名されました。
このメンバーが、英語、エストニア語、ドイツ語、ハンガリー語、日本語、ノルウェー語、ロシア語、スペイン語の観点からプレインランゲージに関する標準化について検討しています。
さらに、ドラフト委員会以外のWG11メンバーが、アフリカーンス語、フィンランド語、フランス語、イタリア語、韓国語、ポーランド語、ポルトガル語、スウェーデン語の観点から原案のレビューを行います。
また、WG11のリエゾン機関であるClarity、PLAIN、Centerが助言を提供します。この3団体には、前述以外の言語の専門家も在籍しています(例えばPLAINには南アフリカのズールー語の観点から原案をレビューできるメンバーがいます)。そのためプレインランゲージ規格を適用できる言語の数がさらに増えます。
この3団体が原案をレビューすることで、より深い専門知識に基づいて規格を開発することができます。
作業グループのリエゾン機関が助言を行う際は、ISOが用意している正式な方針とプロセスに準拠して行う必要があります。特に、原案をレビューする場合、守秘義務を守り、原案を目的以外で使用しないことが求められます。
今後のスケジュール
今後のスケジュールとしては、ドラフト委員会が委員会原案2を作成し、WG11がレビューを行います。その後、委員会原案3、4・・・と続きます。
最終的に、WG11が国際規格原案の最終形を完成させ(おそらく2021年半ば)、この原案をISOに渡し最終承認のための投票を行います。投票者は、TC37に参加している32か国の標準化団体です。この投票メンバーに加え、TC37には、Oメンバーと呼ばれるオブザーバーとして参加している標準化団体が、29か国から参加しています。ただし、Oメンバーに投票権はありません。TC37に参加している団体が所在する国を確認するには、こちらのリンクを参照してください。
最終原案がISO投票によって承認されると、各国の標準化団体がこの規格を採用するかどうかを決定します。決定にあたり、ISO規格に国および言語別に必要な変更を加えることが可能です。
プレインランゲ―ジ規格のポイント:
• 他のISO規格同様に、プレインランゲージ規格への準拠は任意であり、義務ではありません。
• スタイルガイドではありません。また、ライティングガイドでもありません。
• この規格は、できるだけ多くの言語に適用できるように作成されています。
• この規格は、International Plain Language Federation が定めたプレインランゲージの定義に基づいて、その定義と足並みを揃えながら作成されています。
• この規格に関わりたい方は こちらを参照してください。
これまでの経緯
International Plain Language Federationが発案
International Plain Language Federation は、Clarity、PLAIN、Centerの3団体が共同で2009年に立ち上げた組織です。メンバーはこの3団体のみとなっています。
2010年、International Plain Language Federationは意見書を発表しました。この意見書では7つのプロジェクトについて述べており、そのひとつがプレインランゲージ規格でした。しかし、その後8年間、他のプロジェクトが進む中、規格化プロジェクトに進展はありませんでした。
2018年、当時International Plain Language Federationのトップであったアネッタ・チークが、規格化プロジェクトを前進させるための委員会を設立しました。その議長に指名されたのが私です。
2019年、ISOメンバーであるStandards Australia(オーストラリアのプレインイングリッシュ団体)にプレインランゲージ規格の開発を打診しました。
Standards AustraliaがISOにプレインランゲージ規格を提案
さまざまな調整後、ISOにプレインランゲージ規格の提案をするために必要な書類を提出し、Standards Australiaとのミーティングを行いました。ここで、Standards Australiaがプレインランゲージ規格の作成をISOに正式に提案することが決まりました。
新規格の提案は、カナダのオタワで開催されたTC37の年次会議中のISOミーティングで行う必要がありました。Standards Australiaに指名を受け、私が提案を行いました。このミーティングでは、International Plain Language Federationトップのアネッタ・チークから大きな後押しをしてもらいました。
ISOに新規格を提案するためには、原案の一部を提出する必要があります。これはエキスパートドラフトと呼ばれています。
オタワのミーティングでは、提出したエキスパートドラフトが承認され、次の段階である投票に進むことになりました。この投票は、30か国の標準化団体が3か月の期間をかけて行いました。
ISOが提案を承認
2019年9月、ISOの投票でプレインランゲージ規格の提案が承認されました。この際に作業グループ11(WG11)が設立されました。ここからが本番です。
最初のタスクは、エキスパートドラフトを完成させ、作業原案バージョン1へと進化させることです。このために、WG11はプレインランゲージ界のトップ3人、スーザン・クレイマン、デイビッド・リプスコム、アネッタ・チークを指名しました。この3人が、ISO規格に必要な要件を学び、エキスパートドラフトを完成させました。
その後、次のプロセスが行われました。
• 3人が完成させたエキスパートドラフトをWG11が委員会原案バージョン1として正式に採用。
• WG11が最初の委員会原案に対するコメントを書面で提出。16か国、13言語の50人がそれぞれの観点からのコメントを提出したため、その数は238件となりました。多くはマイナーなコメントでしたが、複雑なコメントもありました。
• エキスパートドラフトを完成させた3人がこれらのコメントに書面で対応し、委員会原案バージョン1.1が完成しました。
• 2020年6月、WG11はZOOMミーティングを行い36人が参加しました。
◦議論するべきコメントがまだ残っているかどうかを確認。
◦ドラフト委員会の指名。
現在、ドラフト委員会が委員会原案バージョン2の作成に取り組んでいます。全速力で規格の実現を目指します。
2020年の終わりに、WG11はTC37リエゾン機関であるClarity、PLAIN、Centerに対し、委員会原案に対するコメントを求める予定です。
謝辞:
• Standards Australia、ISO、TC 37の皆様、温かい応援とサポートをありがとうございます。
• WG11の皆様、ドラフト委員会の皆様、スーザン・クレイマン、デイビッド・リプスコム、アネッタ・チーク、委員会原案バージョン1および1.1をありがとうございます。
• 委員会原案バージョン1において、役立つ238件のコメントを丁寧に下さった皆様、ありがとうございます。
最新情報を知る
このプロジェクトに関する次のアップデートは、2020年10月のAccess for All オンライン・プレインランゲージ会議となります。内容は下記のとおりです。
• WG11のドラフト委員会によるプレゼンテーション(録画)
• ISO TC37議長ローレント・ローマリーと私(WG11招集者、クリストファー・バルムフォード)によるパネルディスカッション(ライブ)
ISO、2019年9月に「プレインランゲージ(平易な言語)」の国際規格化を採択
2020.09.01
2019年6月にThe International Plain Language Federationのプロジェクトの代表が、『Plain Language(プレインランゲージ)の標準化』への提案書を国際標準化機構(ISO)の技術委員会37(TC 37)に提出しました。
そして、同年9月末に、TC37においてISO化に向けた作業を開始することが採択されました。2009年よりプレインランゲージの標準化に向けての取り組みが開始され、10年の歳月をかけて採択まで漕ぎつけました。
JPELCではISO化の最新情報を随時お伝えしていきます。