『勇者の言葉』の普及をめざして

昨日、FinCity.Tokyoのイベント「英文IR人材育成講座(ハイブリット開催/1000名)」に登壇し、プレインランゲージについてお話しさせていただいた。

プレインランゲージとの出会い、世界に広がるISOプレインランゲージ、そしてその効果。最後に代表的なガイドラインをかいつまんで解説した。

会場の東証ホールには参加者が150人ほどいらっしゃった。身を乗り出して投影画面を見入ってくださる方も。その熱心さに圧倒された。

初めてプレインランゲージでの翻訳依頼を引き受けて以降、それまで見慣れていた靄(もや)のかかった英文が、以降、翻訳者からアップされる英文はすっきり明確で、納品前チェックの苦痛さが軽減されたのに驚いた。翻訳後のバイリンガルチェックをする校正家からも、「プレインランゲージでの仕事なら、もっと手伝いたいので、なるべく自分に回してほしい」という要望も届くほどだった。

その効果と反響に、私は調子に乗ってある電子機器メーカーに新規営業へ出向き、「弊社の強みは冗長な日本語を簡潔な英文、プレインイングリッシュで翻訳することです。」と売り込むと、その会社の翻訳部隊の長老の方に「翻訳をなめている!」と、こっぴどく叱られ、出禁を食らった。オフィスに戻り、アメリカ人翻訳者にそのことを話すと、「彼ら流の英語で満足しているなら、それでいいじゃない」とたしなめられた。

あきらめの悪い私は、懲りずにグローバル展開している企業の英文開示担当の財務部(当時はIR部というのは無く財務の方が開示担当をされていた)の方を訪ね、「アメリカ証券取引委員会規定の英文開示ガイドに従った明確な英文での翻訳ができます」と売り込むと、はたまたオジサマ二人にこっぴどく説教され、恐れおののきオフィスに逃げ帰った。

昨日、東証へ向かう道すがら、そうした18年前の光景が脳裏に浮かび、これまで何度も打ちのめされながらも、よくここまでこぎ着けたものだと、自分ながらに感心した。

ゴールには未だ遠い道のりだが、世界の中で輝く『日本』、そして『日本人』であるために、『勇者の言葉』(毅然と自身の意見を述べることを鼓舞する意味で、名づけたプレインランゲージの別称)の普及活動は続く。

浅井満知子
(JAPL代表理事)