世界で広がる「プレインランゲージ」とは? サステナビリティ情報発信に重要な理由

「企業によるサステナビリティの情報発信は、読者に十分伝わっていないことも多い。

一般的にあまり知られていない専門用語やカタカナ語が使われているためだ。

幅広い人に共感してもらうためには、プレインランゲージの考え方を取り入れることが有効だ。」

上記は、サステナブルブランドのニュースからの抜粋です。

サステナビリティの情報発信で活用すべきプレインランゲージの重要性や、JAPLについても言及されています。

詳細は「世界で広がる「プレインランゲージ」とは? サステナビリティ情報発信に重要な理由」をご覧ください。

橘川 真澄
(JAPL理事)

英文開示はプレインランゲージで:提案書「英文開示の実務対応」(全国株懇連合会)

「株式市場に向けた情報開示は、文学作品のように格調の高い文体で書く必要もないし、難解な語彙で飾り立てる必要もない。(中略)受験英語で学んだ難しい知識は一旦忘れて、むしろ平易・簡潔・明解な英語で書くことが望ましい。」

上記は、全国株懇連合会(注)が2025年11月に公表した提案書「英文開示の実務対応」からの抜粋です。

東京証券取引所は同年4月から、プライム市場上場企業に対して決算情報を含む主要な投資家向け情報について、英文同時開示を義務づけました。

日本株の売買シェアの60%以上を海外投資家が占めるなか、いかに読みやすく、迅速に英文で開示をするか、本書では、そのための手段としてプレインイングリッシュの利用を推奨しています。

プレインイングリッシュの具体的な説明、またプレインイングリッシュの普及によって、どのように米国上場企業の招集通知は変わったのか、実際の例を比較した詳細な分析は、株式の実務担当者でなくとも、英語をビジネスで使っている方には学びの多い内容です。

日本企業の英文開示の進化に注目が集まっています。

注:上場企業等の株式実務担当者による任意団体で、法務省、証券取引所等との交流、実務・書式の提言等を通じて、株式実務の円滑化を図ることを目的としています。

ご参考:英文開示の実務対応 第80 回全株懇定時会員総会審議事項の紹介(赤坂国際法律事務所)

橘川 真澄
(JAPL理事 )

国際会議「Brussels Plain Language Experience 2025」への参加

2025年11月5日から7日にブリュッセルで開催された国際会議「Brussels Plain Language Experience 2025」に浅井、寺井とともに参加しました。この会議はPlain Language Association International(PLAIN)とClarity International、そして欧州議会、欧州委員会、ベルギー政府、司法研修所が共催し、「Uniting for a brighter future: A new era for plain languageより明るい未来のために団結を:プレインランゲージの新時代」をテーマに、各国のプレインランゲージの専門家や実務者が数百名集まりました。

 

ISO、法務、AI、デザインなど多岐にわたるセッションやパネルディスカッションが毎日行われました。特に印象に残ったセッションはLorenzo Carpanè氏による「神経科学とプレインランゲージ」、Karel van der Waarde氏による「ISO規格が患者の権利と医療結果をどう改善するか」、欧州議会の翻訳チームによる「多言語対応サービスのアクセシビリティ」、Neil James博士による「ツールを活用した倫理的説得」などでした。いずれもプレインランゲージやISO 24495に基づくコミュニケーション方法が有効であることが紹介されました。

 

JAPLでは、浅井が日本におけるプレインランゲージについて、寺井は日本における社会保障制度情報のアクセス性とプレインジャパニーズの有効性についてポスター発表を行いました。

 

プレインランゲージに関するアジアからの情報が少ないこともあり、各ポスターには常に訪問者が訪れ、さまざまな質問をいただき、盛況のうちに終えることができました。

 

こうした国際会議に参加したのは初めてですが、普段はZoom上でしか会うことのできなかった世界のプレインランゲージのエキスパートとネットワークを築けたことは大変貴重な経験でした。この縁を大事に、世界のプレインランゲージの動向をはじめ、皆様にさまざまな情報をお届けしていきたいと思います。

橘川 真澄
(JAPL理事)

国際標準化ワークショップで感じたプレインランゲージの必要性

万博会場で実施された国際標準化フォーラムで、パネル2「ウェルビーイングと標準化」のモデレータを務めた。

パネリストは上の図に示す各分野での国際標準化の動向について説明した。健康・安全とウェルビーイングに関わる標準化のきっかけは職場での健康安全(Occupational health and safety management)である。メンタルヘルスに関わる標準も含め今では世界各国で利用されている。

しかし、職場に所属しない人々も大勢いる。子供たち、商店主、農業従事者や高齢者など。それらの人々も含め、地域と組織でのウェルビーイングマネジメントの共通原理を示す国際標準(Wellbeing management in organizations and communities)が誕生した。また、急速に発展しているデジタル(Digital Technologies)は、スマートウォッチでの心拍数測定のように、ウェルビーイングを高めるのに利用できる。

忘れてならないのは、ウェルビーイングを高めるサービスや製品が対象者に使いやすいこと。障害を持つ人々などが排除されないこと(Usability and accessibility)。一方で、よく理解できないままに高額のサービスや製品を購入してしまう消費者もいる。サービス提供者に消費者の脆弱性に対応するように求める国際標準(Vulnerable Consumers)も誕生している。

これらの国際標準が実際にどのように利用されているか、モデレータとして質問した。五人のパネリストは実例を紹介したが、普及への努力がもっと必要なことも明らかになった。フォーラムに参加していたISO会長、IEC会長にも意見を求めたが、関連組織(政府や企業、NPOなど)を巻き込んだワークショップを開催するなど、一層の普及努力が必要という意見だった。そこで下の図を示して、パネルの結論「Let ISO and IEC facilitate promotion activities(ISOとIECによる普及活動をもっと活発にしよう)」とした。

パネルを通じて、プレインランゲージの必要性に気づかされた。「TC 12のSC 3で開発されたIS 45678」というようにむやみに番号を話すパネリストもいた。12番目の技術委員会(TC)の3番目の下部組織(分科委員会、SC)で開発された45678という番号が振られた国際標準(IS)という意味だが、番号だけでは聴衆には理解できない。

聴衆が標準化関係者に限られる内部調整の会議であればよいのだが、このフォーラムは広く一般の方々に国際標準化の動向と価値を訴えるものであった。だからこそ、聴衆に理解できるように話をする必要があった。番号だらけのパネリストをどう補ったらよいか。これを考えながらモデレータの役割を果たさなければならなかった。

プレインランゲージについても普及活動が求められると痛感した。

山田 肇
(特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム理事長/工学博士/東洋大学名誉教授 /JAPL理事)

知的財産部の方々とプレインランゲージについて話をしました

軽電子機器協議会にお招きいただき、各社の知的財産部の方々とプレインランゲージについて話した。

学校教育で「特許は独占権」と教えられているが、知的財産部の方々が気づいている通り、特許は知的財産権に関わる交渉を有利に導く道具に過ぎない。独占権という誤解を突いて新規株式上場(IPO)の際に「強力な自社特許」をうたうベンチャー企業があるが、これは投資家に過剰な期待を抱かせる恐れがある。

そんな話をしたうえで、僕はプレインランゲージ国際標準を紹介した。投資家を含め一般読者に対するコミュニケーションは「読者は必要な情報を入手できる」「読者は必要な情報を簡単に見つけられる」「読者は見つけた情報を簡単に理解できる」「読者はその情報を使いやすい」という四原則に沿う必要がある。プレインランゲージ国際標準はこれら四原則の詳細を提示する。

これに対して、「一般読者どころではなく、社内の研究者とコミュニケーションをとる際にも、プレインランゲージが必要だ」という反応が知的財産部の方々から返ってきた。確かにそうだ。「クレーム」は「苦情」ではなく「特許請求の範囲」の意味である。突然、「クレームを見直してほしい」と言ったら、研究者は戸惑うだろう。

科学技術に関する情報を広く国民に向けて提供する科学コミュニケーションでは、情報は倫理的に提示しなければならない。一方的な立場や解釈を立つことなく、データはフェアに、バイアスなく提示する必要がある。例えば、ワクチンについて話すなら、効果と共に副作用についても公正に伝えるのがよい。

主要国首脳会議(G7)科学技術担当大臣会合(仙台、2023年)で、科学コミュニケーションについてワーキンググループ(WG)を設置することになった。ワクチンやAIについて正確な情報が国民に伝わらないという課題にG7各国が懸念し、WGが設置されたのだ。どのようなテーマをどのように伝えるかを検討するのがWGであって、一方、情報提供の手法はISOのプレインランゲージ標準化グループで国際標準化が進んでいる。両者が連動することで、科学コミュニケーションは改善されていく。先に触れた「情報は倫理的に提示する」は現在検討中の国際標準案にある一文である。

広く国民に向けた科学コミュニケーションについても、知的財産部の方々に理解していただいた有意義な会合となった。

山田 肇
(特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム理事長/工学博士/東洋大学名誉教授 /JAPL理事)

学び多き山田名誉教授の講義

山田肇JAPL理事が名誉教授を務める東洋大学大学院の授業を見学、聴講させていただきました。公民連携専攻の学生たちは、山田理事による公共機関から市民への情報発信のあり方についての講義、特に海外動向を含めてのプレインランゲージの講義に熱心に耳を傾けていました。

印象的だったのは、講義の最後の質疑応答で、ある学生が「日本でも公共政策や公共事業についての説明にプレインランゲージは有益であり、その法律が必要ではないか。日本の現状はどうか」と質問したことです。まさにその通りで、公共機関の事業は私たちの税金によって成り立っており、納税者への説明責任があります。さらに、代議士は有権者の代表である以上、わかりやすく簡潔に説明する義務があります。曖昧で煙に巻くような答弁は許されませんが、長年の慣習でそれも自嘲に変えてしまう自分がおり、彼の率直な問いに清々しさを覚えました。

山田理事は、「私たちの努力不足もあり、現時点ではプレインランゲージはJIS規格されていません。その利用も日本で義務化されていません。それを推進していくのが私たち(JAPL)の役目です」と締めくくられました。

浅井 満知子
(JAPL代表理事)

情報発信はコンパクトに

1月29日に東京都主催の「アクセシブルツーリズム推進シンポジウム」に登壇した。今年は東京で耳が聞こえない、聞こえにくい人たちのオリンピック(デフリンピック)が開催される。急増するインバウンド旅行客も日本語音声は理解できない。これらの人向けに文字による情報提供を呼び掛けたうえで、「情報発信はコンパクトに」と、プレインランゲージ原則について話した。

観光庁は「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を2024年に公表した。文字による情報提供については、次のように推奨されている。

  • 名称・標識・サイン・情報系は、提供情報が明らかに訪日外国人旅行者にとって利用価値が低い場合を除き英語併記を行うことを基本とする。
  • 施設特性や地域特性の観点から、中国語又は韓国語等の表記の必要性が高い施設については…中国語又は韓国語を含めた表記を行うことが望ましい。

京成スカイライナーの車内表示板は、行き先が日本語、英語、中国語、韓国語で順番に表示する。日本語がわからない旅行客が多いから、まさに施設特性に基づく情報提供である。

都心を走る電車でも、四か国語で次の停車駅を表示している場合がある。しかし、次の駅まで二分の電車で中国語や韓国語表記をしていると、情報の取得に時間がかかりすぎ、降りられなくなる恐れが生じる。

情報発信は、それを受ける人の目的を満たすようにコンパクトに行うのがよい。ユニバーサルスタジオシンガポールには、ボートに乗って流れを進むアトラクションがある。このアトラクションの入り口には、「濡れるよ、びしょ濡れかも」と英語と中国語で書かれている。黄色背景に黒字という目立つ表示で、文字サイズも大きい。その下には、ポンチョ売り場やロッカーの案内が小さく書かれている。コンパクトな情報発信の好事例である。

山田肇
(特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム理事長/工学博士/東洋大学名誉教授 /JAPL理事)

池上彰氏と高橋洋一氏、軍配はどちらに上がるのか?

米国の第47代大統領に共和党のドナルドトランプ氏が1月20日(日本時間21日)に就任しました。

彼の就任演説の英語をめぐって、ネット上では興味深い意見が飛び交っているので紹介したいと思います。

私の著書でも紹介しましたが、アメリカの歴代大統領(リンカーン大統領以降)の遊説演説や就任演説はプレインランゲージ(プレインイングリッシュ)※1で語られており、プレインランゲージはPlain Writing Actという法律にもなっています。

※1:引用カーネギーメロン大学言語学研究所研究論文

コンテンツ紹介

【米山明日香 青山学院大学准教授/News Picks】

「トランプ大統領の就任演説に見る英語と国民の変化」https://newspicks.com/news/11163802/body/

【森永康平 /経済アナリスト Youtube】

池上彰氏「トランプ大統領の英語は中学生並み」と批判https://www.youtube.com/watch?v=StZ_S5GFD-g

【高橋洋一氏/経済学者 Youtube】

https://www.youtube.com/watch?v=yfZnqfYo_DU

高橋氏は米国社会やプレインランゲージのこともご存じの上でコメントされています。

池上氏は小学生にもわかりやすく政治や経済を『プレインジャパニーズ』で解説することを得意とされています。そんな彼が、プレインランゲージのトランプ氏の演説をディスっているのは興味深い。なぜなら池上さんの専売特許である明瞭で簡潔なコミュニケーションを否定しているようなものだからです。

もし、外国人が彼の日本語を「中学生レベルの日本語」とディスられたとしたら、きっと彼は「何を言っているんだ。難しいことを小、中学生にも理解できるように説明する方が難しく、アナウンサーでもそれができるのは私くらいだぞ!」と反論するのだろうか。

浅井満知子
(JAPL代表理事)

進むISOでのプレインランゲージの国際標準化

ISOでプレインランゲージの国際標準化が進んでいる。2023年に最初に出版されたのがISO 24495-1である。この国際標準にはGoverning principles and guidelines(主導原理とガイドライン)という副題が付けられ、主導原理として次の四点が掲げられている。

  • Readers get what they need:読者は必要な情報を入手できる
  • Readers can easily find what they need:読者は必要な情報を容易に発見できる
  • Readers can easily understand what they find:読者は発見した内容を容易に理解できる
  • Readers can easily use the information:読者は容易に情報を利用できる

つまり、読者のニーズに関連する情報を、探しやすく、理解しやすく、使いやすい形で提供するというのが、プレインランゲージの主導原理である。

ISOでは特定分野における一連の国際標準シリーズに対して、パート1、パート2などと附番する場合がある。24495-1は24495シリーズ(プレインランゲージ)のパート1である。そして、引き続きパート2、3、4の開発が進められている。

24495-2はLegal communication(法的コミュニケーション)。登山に例えれば開発作業は八合目に達し、2025年には出版される予定である。マンション管理組合は管理会社と管理契約を締結する。それでは住民は契約内容をきちんと理解できているだろうか。生命保険契約でも、担当者から重要事項の説明はあっても、法律の素人にはわかりづらい。パート2の目的は、理解しやすい形で法的な情報を提供するように法律専門家に促し、個人や組織が法的義務を果たし、法的手続きに容易に参加できるようにすることである。

24495-3はScience writing。五合目から八合目に向けて登っている段階にある。生命科学や計算機科学は急激に進歩し、多くの人々がその恩恵を味わえる時代が来た。しかし、同時に「遺伝子組み換え食品は怖い」「人工知能に支配されるのではないか」といった不安も人々に生まれている。科学技術に関する情報を探しやすく、理解しやすく、使いやすく提供することは、このような不安の解消にも役立つだろう。

24495-4にはRequirements for implementing plain language principlesという副題がついている。プレインランゲージの重要性を理解した政府や企業が、「我々はプレインランゲージ原則に基づいて情報を発信する」と宣言する。どんな体制を作ればこの宣言が守られていくだろうか。この国際標準は、プレイランゲージを宣言する組織が守るべき原則や体制を提示する。まだ登山道の入り口で、これから開発が進む段階にある。

プレインランゲージの主導原理を定めた国際標準の出版を契機に、パート2、3、4と次々に標準化が進められているのが、ISOの現状である。

山田 肇
(特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム理事長/工学博士/東洋大学名誉教授 /JAPL理事)

「これ、やらなくちゃ」は通じない?

もはや街中に自然に溶け込んでいるかに見える海外からの観光客の方々の他に、多数の企業で雇用され、活躍していらっしゃる海外ご出身の方も多くなりました。厚生労働省によると、令和5年10月末の時点で2,048,675 人なのだそうです。この中には、ネイティブレベルかそれ以上に日本語を使われる方もいらっしゃる半面、まだ運用に不安がある方もいらっしゃいます。まだ日本語に不慣れな方とコミュニケーションをとるときに、ちょっとお気にかけていただきたいポイントに触れたいと思います。

日本語のネイティブや日本語にすっかり馴染んだ方が無意識に使っている「~しなくちゃ(←~しなければならない)」、「これ、やっといて(←やっておいて)」などの短縮された言葉遣い。日本語の使用者にとってはごくごく当たり前にあるものですが、教科書通りの日本語を学んでおり、その学習歴も浅い方には通じにくいことがしばしばあります。

そうは言っても、自分の言葉遣いを客観視する機会はなかなかありません。そこで、英語の短縮語を使って、所属先の48名の日本人学生を対象に英文の翻訳をしてもらいました。「Gimme a cup of water.」のように提示した文を日本語に訳してもらい、その後で元の形になっている文を見せて訳してもらいました。その正答率をまとめたのが下の表です。

これらの英語の短縮語も、英語のネイティブに言わせれば、日常で使い慣れたごく自然な表現なのでしょう。ですが、このような口語に慣れていない人からすれば、理解が妨げられてしまうこともしばしばあります。「あれ?そんなに難しいことを言っていないのに、なぜ通じないのだろう?」と思われた時は、無意識にお使いになっている短縮語が原因の1つかもしれません。

五十嵐小優粒
(中部学院大学 留学生別科 専任講師)
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