ISOでプレイランゲージの国際標準化が進んでいる。2023年に最初に出版されたのがISO 24495-1である。この国際標準にはGoverning principles and guidelines(主導原理とガイドライン)という副題が付けられ、主導原理として次の四点が掲げられている。
- Readers get what they need:読者は必要な情報を入手できる
- Readers can easily find what they need:読者は必要な情報を容易に発見できる
- Readers can easily understand what they find:読者は発見した内容を容易に理解できる
- Readers can easily use the information:読者は容易に情報を利用できる
つまり、読者のニーズに関連する情報を、探しやすく、理解しやすく、使いやすい形で提供するというのが、プレインランゲージの主導原理である。
ISOでは特定分野における一連の国際標準シリーズに対して、パート1、パート2などと附番する場合がある。24495-1は24495シリーズ(プレインランゲージ)のパート1である。そして、引き続きパート2、3、4の開発が進められている。
24495-2はLegal communication(法的コミュニケーション)。登山に例えれば開発作業は八合目に達し、2025年には出版される予定である。マンション管理組合は管理会社と管理契約を締結する。それでは住民は契約内容をきちんと理解できているだろうか。生命保険契約でも、担当者から重要事項の説明はあっても、法律の素人にはわかりづらい。パート2の目的は、理解しやすい形で法的な情報を提供するように法律専門家に促し、個人や組織が法的義務を果たし、法的手続きに容易に参加できるようにすることである。
24495-3はScience writing。五合目から八合目に向けて登っている段階にある。生命科学や計算機科学は急激に進歩し、多くの人々がその恩恵を味わえる時代が来た。しかし、同時に「遺伝子組み換え食品は怖い」「人工知能に支配されるのではないか」といった不安も人々に生まれている。科学技術に関する情報を探しやすく、理解しやすく、使いやすく提供することは、このような不安の解消にも役立つだろう。
24495-4にはRequirements for implementing plain language principlesという副題がついている。プレインランゲージの重要性を理解した政府や企業が、「我々はプレインランゲージ原則に基づいて情報を発信する」と宣言する。どんな体制を作ればこの宣言が守られていくだろうか。この国際標準は、プレイランゲージを宣言する組織が守るべき原則や体制を提示する。まだ登山道の入り口で、これから開発が進む段階にある。
プレインランゲージの主導原理を定めた国際標準の出版を契機に、パート2、3、4と次々に標準化が進められているのが、ISOの現状である。