演説はサビから始めよう

気候変動に関する国際連合の会議(COP28)での岸田文雄内閣総理大臣の演説は評価されなかった。総理大臣は「Action to Zero led by Japan and UAE」と題して演説したが、各国NGOは日本に「化石賞」を与えると発表した。

総理演説は「日本の技術が大きく貢献できる」というが、どんな技術で貢献するか具体性がなかった。

人工光合成技術は国際コンペティションで一位を取り、特許競争力調査でも評価が高いという。「日本が世界に秀でる人工光合成技術を普及し、各国の気候変動対策に貢献する」と、具体的に演説したら「化石賞」の不名誉は避けられたかもしれない。

「愛は勝つ」で知られる歌手KANが亡くなった。追悼の多くが、この歌がサビから始まることに言及していた。懐メロになればなるほどサビしか覚えていないから、Aメロ、Bメロから始まっても思い出せない。サビから始めればピンとくる。

プレインランゲージの原則は読者を明確に定めること。そして結論を文頭に置くこと。サビから始まる「愛は勝つ」は多くの人々に愛された。総理大臣もサビ「人工光合成技術で世界に貢献」から演説を始めればよかったのだ。

山田 肇
(特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム理事長/工学博士/東洋大学名誉教授 /JAPL理事)