シンプルな単語で伝える
数日前、オフィスビルの近くの芝生に立っている下記の看板に目が留まりました。
Experimental Turf Area
Please Avoid Pedestrian Traffic on Turf
(訳注:実験的芝地エリア 芝地の歩行者通行は避けてください)
ぱっと見た時に、意味が分かりづらいと感じませんか?「KEEP OFF THE GRASS(訳注:芝生に入らないでください)」の方が分かりやすいし、一般的な表現です。必要以上にメッセージを複雑にする必要はありません。
ベストセラー作家ジェームス・ミッチェナーは、小説を書く際にとても基本的な言葉を使います。自身の半生と作家としてのキャリアについて書いた名著『The World Is My Home』の中で、ライティングの秘訣を「write simply (シンプルに書くこと)」と2ワードで説明しています。また、「身近な短い単語を使って素晴らしいスタイルを築き上げたアーネスト・ヘミングウェーを尊敬しています」とも書いています。
ミッチェナーは優れた学者でもあったため、莫大な量の単語を知っていました。しかし、そのボキャブラリーを見せつけたいという欲望はなく、「優れたライティングは、あたりまえの単語を使って圧倒的な結果を生みだすこと」であると言います。
サマセット・モームの話も例に挙げて説明しています。サマセット・モームは、ミッチェナーのキャリアが始まるのと同時期にキャリアを終えた著名な小説家です。モームは作家になると決めると、新しいノートを買い、難しくて尊敬を集めるように感じる単語を書き出しました。長年たってから、このリストを見直してみると、リストに書き出した単語はひとつも使っていませんでした。
ミッチェナーは、知っている単語をすべて使う必要はないと強調しています。
人気コラムニストであり著名なライティング講師であるジェームズ・J・キルパトリックも同氏の考え方に賛同します。ライティングの一番の基本は、メッセージを伝えることにあり、適切な単語を美しくつなげることがライターに必要な技術であるといいます。単語を美しくつなげることは、知っている単語を見せつけることとは違うのです。
シンプルに書くためには、まずドラフトから
次のような文書を作成する際には、まずドラフトを書きます。
- 覚書
- 手紙
- 記事
- メール
- プレスリリース
- ウェブサイト
- 職務記述書
- パフォーマンス評価
- 指示書
- コンサルタント提案書
- 販売契約
- アニュアルレポート等
ドラフトを書いた後、レビューと編集を行います。その際、ドラフトを書くのと同じ時間をかけます。仰々しい単語やフレーズに印を付け、広く使われる一般的な単語に置き換えます。ほとんどの場合、より分かりやすい単語に置き換えることが可能です。
例
難しい単語 | シンプルで 分かりやすい単語 | 意味 |
Fortuitous | Lucky | 幸運な |
Prevarication | Lie | 言い逃れる、嘘をつく |
Optimal | Ideal | 最適な、理想的な |
Feasible | Possible | 実現可能 |
Peruse | Read | 読む |
Interrogate | Question | 問いただす |
Altercation | Argument | 口論 |
Surrogate | Substitute | 代用物 |
いずれも「シンプルで分かりやすい単語」のほうが一般的に広く使われます。
次のステップ
他の人があなたを混乱させたり苛立たせたりする単語を使うことがあったら、その単語をメモしておきましょう。そして、自分が話したり書いたりする際には、その単語を使わないようにします。いつも使っている専門用語やフレーズを使う必要がある場合は、その単語の簡単な定義を加えます。
覚えていてください、「一番伝わるのはシンプルな単語」であることを。
出典:https://www.plainlanguage.gov/resources/articles/simple-words-work-best/